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おにいさん 

今日は、おにいさんが来る最後の日だった。
おにいさんは、もうすぐ新しい仕事のために、違う土地に引越しをする。
太尊に来るのは今日が最後、と聞いていた。

店を継いで8年、とにかくやるのだ、という気持ちだけはあったが、
ほぼ全くの素人から太尊をはじめた最初の頃からずっと、
親子で来て、見守ってくれていた。

たくさん失敗した。
いっぱいいっぱいでメチャクチャ待たせてしまったこともあった。
それでも、毎週火曜日と金曜日、顔を見せて食事をしてくれた。
太尊に一番来てくれたお客さんであり、
一番我慢してくれたのはおにいさん親子だろう。
あたしは、この二人に育ててもらった、と思っている。


最初の頃、一番苦手だったのが焼き飯だった。

慣れてなくて余裕がないのと、
自信がないから味見を繰り返すと舌がバカになって
塩辛い焼き飯をずっと作り続けていた。
あの頃、よくあんな状態でお店が持ったなあと今にして思うと恐ろしいが
おにいさんはよく焼き飯を頼んでくれていた。

1回目は黙って食べて、2回目も黙って食べて、3回目になってやっと、
ジッとあたしの目を見て、
「ちょっと、味が、辛いかな・・?」と
よく言葉を選んで言うように、口にした。

あたしは、おそらく3回とも同じように、辛い味付けで焼き飯を焼いた。
変なものを食べさせられて、二度と店に来ない、もしくは焼き飯を頼まない、
という選択肢だってあるのに、3回続けて食べてみてくれて、
たまたま失敗したのか、本当にこれでよいと思っているのか見定めたうえで
あたしの心に届くように、いつも早口なおにいさんが、
慎重に言葉を選んで、ゆっくりと、教えてくれたのだ。
こういう人はなかなかいないと思う。
最初におにいさんを優しい人だと思ったのは、このときだ。


おにいさんは、口は悪いけど優しい人だ。
ベタベタ優しいんじゃなくて、見守って待ってくれるその大らかさが好きだった。
おにいさんがいると、なんとなく安心するのだ。
あたしが他のお客さんの注文を忘れていたり、
水を出すのを忘れていたりすると
そんなに大きな声でなく、「餃子やったか?」とか教えてくれる。
漫画を読んでいても、見てくれている。視野が広い。
義理堅いところもあって、頼んだことは必ず、しかもすぐにやってくれる。
忘れる、ということがない。
忘れない、というのはすごい能力だなぁと思うのだ。
この、視野が広いことと忘れない能力が、
あたしにはない資質だからうらやましい。
おにいさんにはいいところがたくさんある。

おにいさんのことがあたしは大好きだ。
だから、おにいさんが決めた、新しい土地での仕事を応援しようと思う。


おにいさん、今まで本当に、たくさん優しくしてくれてありがとう。



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